コンポスト浄化槽3 -スカムの生成と浮上分離-
汚泥を長期間引き抜いていない浄化槽の沈殿分離室のスカムは、分解が進みコンポストのようになっている場合が多いようです。
これをスコップで掘り返せば、そのままコンポストとして回収できそうですね。
しかし、実際の浄化槽では、スカムの表面が乾燥しているように見えても、その直下は水分をたっぷりと含んだ汚泥のままであることが多いのです。
その場合、残念ながら、そのままではコンポスト浄化槽にはならないので、更なる工夫がいります。
スカムをコンポストにまでもっていくには、まず第一に、スカムの水分を十分に抜くことが必要になります。
そのためには、スカムを水面から高く持ち上げて離す必要があります。
ここでは、その方法について考えたいと思います。
下に、コンポスト浄化槽の沈殿分離室（コンポスター）におけるスカム生成のモデル図を示します。
ここに流入した固形分は、沈殿分離室の底部に沈殿します。
次に、嫌気性分解の過程でガスが発生し、汚泥の一部がスカムとして浮上します。
浮上したスカムは、ガス気泡が離れて、大部分が再び沈降しますが、一部はスカムに取り込まれて残留します。
スカムは、底部汚泥の浮上による補給と崩壊による減少を、絶えず繰り返している中でその量を変化させています。
このため、スカムを成長させるには、供給速度が崩壊速度を上回る必要があります。
それには、その供給源である底部汚泥の量が多いことが必要となります。
このため、底部汚泥が100％スカム化して浮かび上がって、底に全く無い状態というのは、あり得ないことになります。
大量のスカムを生成させるには、それを上回る底部汚泥の存在が必要になるのです。
よって、モデル図の中にある“底部汚泥厚”を深くすることが、スカム生成の条件となります。
スカムは、成長に伴い、水面より上に浮かび上がるようになります。
この水面より上のスカム浮上部の厚みは、実際の浄化槽では30cm程度までになったものを見たことがあります。
この浮上厚を高くするほど、脱水を進めてスカムの含水率を低下させることができます。
スカムの浮上部は、その底にあるスカム水中部の浮力に支えられています。
スカム水中部の浮力は、ここに含まれるガス気泡により生まれます。
よって、スカム浮上部を高く上げるには、“スカム水中部の厚み”を深くすることが必要になります。
また、スカム浮上部の断面を三角形にして、荷重を軽減することも有効でしょうね。
以上をまとめますと、スカムを高く浮上させるには、底部汚泥厚とスカム水中部厚を深くすればよいと言うことになります。
つまり、沈殿分離室を深くすることが必要で、ここに大量の汚泥を貯留するということが条件となります。
(2025年9月)